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【ポールスミス】ザ・リラクスのメルトンコートができるまで – “誰が着ても美しい服”を作る秘密

ザリラクス(THE RERACS)は、ベーシックなウェアに現代的なエッセンスを加え、時代に合う上質な服を提案するメイドインジャパンのブランド着る人を美しく見せるシルエットや素材の品質の高さを重視して生み出される服は、上品でありながら、強いオーラを放つ

ザリラクスのデザイナーである倉橋直実と、ディレクターを務める倉橋直行に、ブランド立ち上げから今後の目標に至るまでインタビューを行った重要な鍵として浮かび上がってきたのは、ザリラクスの定番アイテムである、ウールメルトンのコート良質な生地への衝撃から始まったザリラクスの、ハイクオリティな物作りの軌跡を辿る

上質な生地へのこだわり

ザリラクスとはどのようなブランドですか?

直実:2010年に立ち上げたブランドですピーコート、トレンチコート、テーラードジャケットなど、定番のアイテムをピックアップし、オリジナルのディテールを加えて再構築していくことで、1シーズンに1アイテム、独自のマスターピースを作っています特に生地にはこだわって服作りをしていて、どの角度から見ても美しく見えるような造形の服を作るために、質の良い素材を使うようにしています

直行:最近のトピックとしては、2017年の6月に“試着のみ”を店頭で受ける「ザリラクス フィッティング ハウス」をオープンさせました新たな販売形式を通して、様々なお客様にザリラクスの世界観をお伝えできれば、と考えています

ブランドを始めようと思ったきっかけは何ですか

直実:本当にブランドを始めたいとかものを作りたいって思ったのは、単純に着れる服がなくなったから学生の時からファッションが好きで、インポートの服をずっと着ていたのですが、価格が高くなってなかなか買えなくなってしまったドメスティックの服も買ってはみましたが、満足するものが無かったんです

ブランドを立ち上げるよりも前に倉橋(直行)が、日本の既存のマーケットにある服には使われていないような生地を見せてくれました実はその生地は日本の尾州で作られたもので、質の良さに衝撃を受けました学生の時からなんとなく上質な生地を使った洋服を作りたいとは思っていましたが、「こういう良い生地を生かして服を作りたい」「自分がいいと思う服を作りたい」と具体的に思ったのはそこからです

生地への強い関心やこだわりはブランド立ち上げ当初からあったんですね

直実:そうですねデザイン性に富んだものとか誰も見たことがない服を着たいという風には思わなくて、日常の延長線上にあるベーシックなアイテムの中で、高いクオリティの物に惹かれますだから、勿論価値観の変化はありましたけど、上質な生地を見ると「このアイテムを作りたい」という発想に直結するのは、初めから変わっていないことです

直行:おそらく、デザイン性で突き動かされることがあまり無いんだと思います素材ありきでどう作ったら美しくなるか、とか、こういう役割の物を作りたい、という風な考え方の方が楽しいんです

オーセンティックなアイテムを、現代において輝くようにデザインされているザリラクスの洋服を形作る鍵となるのは、「生地」デザイナー自ら、機屋や工場とやり取りをしながら選定し、オリジナルの生地を生み出していく

いつもどのような流れで服を作っていますか

直実:シーズンの始まりは、今まで生地屋さんから頂いた全ての生地見本を触り、気に掛かるものを選ぶところから始まりますそして、この生地をどうアレンジしてどういう物を作りたいか、という意見を出してアイテムのラフを書いていきます基本的には生地見本をそのまま使うことはないので、生地に関してもどう発展させていくか考えていますそこからデザイン画は相談しながらちゃんとしたものを書いて、パタンナーに引き継いで、という流れですね

良い生地が揃った段階から服作りが始まるのですね

直行:服作りの中で、生地、付属、パターン、デザインの4つの要素があるとすると、それらをどう掛け合わせていくかが大事デザインが重視される傾向にありますが、テキスタイルやパターンを深く突き詰めることによって、同じようなアイテムでも、もっと違って見えてくることがあります逆にデザインから作ると、いざ素材を当てはめる段階になった時に、うまくはまらずにアイテムが完成しないこともあるだから、最初にテキスタイルを選ぶということは、的を射たやり方だと自分では感じています

立ち上げた当初、直面した困難な出来事は何かありますか

直実:ブランドを立ち上げてから1年半くらいは、バイヤーさんからの発注になかなか繋がりませんでした自分の感覚を信じて、自分の好きな物を作ることにまっすぐになるあまり、ブランドのメッセージ性が強く出すぎてしまったんですバイヤーさんの想定するお客様やお店の方向性に合わない、とよく言われました

直行:デビュー当時のザリラクスは、良い素材を使うがゆえにドメスティックブランドの中では価格が高く、主張も強かったんです自分達としてはリアルクローズだと思って作っていたのですが、そのカテゴリーには当てはまらなかったでも、必ず時代が追い付いてくると思っていました少しは軌道修正することもありましたが、ブランドの価値観は変えずに、信じてやり続けた結果、お店のコンセプトと合致したバイヤーさんに買ってもらう機会や、見てくれる人が増えていきました途中で心も折れそうになれば、お金も尽きそうになりましたけど(笑)

どのような契機でブランドとしての未来に希望が見え始めましたか?

直実:2012年秋冬シーズンに初めて、「スーパー140’s」という上質な原料から作ったウールメルトンの生地を使ってコートを作りましたその時に、単なる売上ということだけではなく、バイヤーさんやお客様から服を気に入ってもらえた、という実感を得られたんですその実感があって、このまま何とかブランドを続けていける、と思いましたちょうどブランドを初めて1年半が過ぎた頃でした

ザリラクス飛躍のきっかけとなったメルトンコート

ザリラクスのメルトンコートができるまで - “誰が着ても美しい服”を作る秘密|写真4